『植物学の父』牧野富太郎、愛にあふれた7つのコトバ + 1

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私は植物の愛人として生まれ来た。
あるいは草木そうもくの精かも知れん。

牧野富太郎『自叙伝』より

「日本植物学の父」とよばれる牧野富太郎さんは小学校中退ながらも、大好きな植物の研究にその一生を捧げました。600種もの新種を発見し、2500種以上もの植物に命名した牧野富太郎さん。

そんな彼の誕生日(文久2年4月24日)は『植物学の日』として制定されています。

そこで今回は

牧野富太郎『愛に満ちあふれた7つのコトバ』

をご紹介します。

Makino Tomitaro

独学

牧野富太郎さんは1862年高知県に生まれました。造り酒屋の跡取り息子としてとても裕福な家に育ちました。幼少時から植物に興味を示していたそうですが、小学校2年生で学校を中退、独学で植物の研究を始めました。

わしは植物の精だよ。

26歳の時、日本の植物図鑑のさきがけとなる『日本植物志図篇』を自費で製作、挿絵も自分で描きました。新種「ヤマトグサ」「ムジナモ」を相次いで発見し、論文で発表。世界的な評価を得るようになります。

不屈

研究者として評価が上がる一方、大学教授たちからは妬まれたといいます。

また、金銭や論文出版でのトラブルも生じ、大学から追われるという苦境に立たされます。

人間は生きている間が花である。わずかな短い浮世である。
その間に大いに勉強して身を修め、徳を積み、智を磨き、
人のために尽くし、国のために務め、自分のために楽しみ、
善人として一生を幸福に送ることは人間として大いに意義がある。

さらに、研究に没頭するあまり資金は底をつき、実家はかたむき、子供が13人という大家族、大学からの援助も期待できず経済的に苦しく、貴重な標本を売りに出すほどでした。

金銭感覚に問題があった富太郎さんを支えたのは奥さまである壽衛子(すえこ)さんでした。借金をしても、標本を手放しても研究に邁進する富太郎さんを「放蕩息子みたいだ。」と言いながらも支えつづけました。

何よりも貴とき宝もつ身には、富も誉れも願わざりけり

昭和2年、仙台市で発見された新種には感謝の気持ちを込めて奥様の名前がつけられました。

『スエコザサ』
富太郎さんの「愛」の表現だったのでしょうね。素敵なエピソードです。墓碑にはこう刻まれています。

世の中の あらん限りや スエコザサ

学位

経済的に困窮していた反面で、富太郎さんを評価する声は多く、50歳の時には東京帝国大学で講師を務め、65歳で理学博士の学位も取得しました。その学位取得の際にはこんなコトバを残しています。

鼻糞と同じ太さの十二円 これが偉勲のしるしなりけり

「こんなもんが欲しくてやってるわけじゃないわい、馬鹿らしい。」と言う声が聞こえてきそうな一句。お見事です。

不死身

標本採集のため日本全国だけでなく中国にも足を伸ばした健脚の持ち主は不死身の人でもありました。

わが姿たとえ翁と見ゆるとも、
心はいつも花の真盛

48歳で、肺の病気にかかり吐血します。死を覚悟した富太郎さんは、「死後遺体解剖」の予約をしましたが、生還。
87歳の時、大腸カタルにかかり危篤状態になります。やがて呼吸は止まり、お医者さんは臨終を宣告。ところが死に水をふくませていたその時、富太郎さんののどが鳴り生き返りました。その数年後も、病床で「時間の問題」といわれながらも回復しています。

酒もタバコもやらなかったといいますが、その生命力は健康とは別のところにあるように思います。

「情熱」

これが不死身の正体ではないでしょうか。

好きで、好きで、大好きで

富太郎さんは自叙伝のなかで繰り返し語っています。
自分はほんとに植物が大好きで、研究することが楽しくて、寝る時間が惜しいと。

草木に愛を持つことによって
人間愛を養うことができる。
思いやりの心、私はわが愛する草木でこれを培い、
その栄枯盛衰を観て人生なるものをも解し得た。

人類はまるで「自分たちが地球を守っている」というような言動をします。

しかし、植物は人類がなくとも繁栄します。

植物たちは、この地球において人類よりはるかに長い歴史を刻んでおり、進化と繁栄をつづけてきました。そして、「自然界」を形成する重要な存在です。

ボクらの祖先たちは、自然の前では無力で、自然に寄り添って生きながらえてきました。
人類を災害から守り、食物を提供し、潤いをもたらしてくれたのは植物です。

木々は木陰をつくり、風を見せてくれます。
花は笑顔を誘います。
感情を揺さぶるのも植物。

植物は言語を話しません。
果たしてそうなのでしょうか? 本当はボクらの能力では理解できていないだけかもしれません。
植物ははるかに高い次元の意識を持って、ボクらに話しかけているかもしれません。

富太郎さんはそのことを知っていたんだと思います。
そして人々に伝えるために選ばれた人でした。


いかがでしたか?

牧野富太郎『愛に満ちあふれた7つのコトバ』

植物を愛し、植物に愛されたひとのコトバは愛に満ち溢れています。

雑草という名の植物は無い


最後まで読んでいただきありがとうございました。

皆さんにとってハッピーな1日が訪れますように ♪

すてきコトバが届きますように。


関連書籍 オススメの3冊

画集

富太郎さんは植物の絵が上手なことでも知られていました。ご本人が発見、命名した植物を中心に収録されています。その繊細で精巧な絵からは植物愛があふれています。

牧野富太郎植物画集 単行本 – 1999/11/1
高知県立牧野植物園 (著)

エッセイ

『牧野日本植物図鑑』はとても有名ですが、図鑑だけではなくエッセイもたくさん出版されています。その中でもオススメな1冊。1日1題づつ読み進めるのもいいですね。

植物一日一題 (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2008/2/6
牧野 富太郎 (著)

自伝

この記事を書く際に参考にさせていただいた書籍です。富太郎さんの人生に興味を持った方にはぜひオススメの一冊です。

牧野富太郎自叙伝 (講談社学術文庫) 文庫 – 2004/4/10
牧野 富太郎 (著)

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