土用の丑の日。うなぎを食べながら一句詠む、そして君は雑学を語り始める。

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石麻呂(いわまろ)に われもの申す 夏痩せに  よしといふものぞ 鰻(むなぎ)とり食(め)せ

〜 大伴家持(万葉集 巻16-3853)

いきなりですが、万葉集から一句。

編纂者とされている大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ「うなぎ」にまつわる和歌です。

とっても痩せている石麻呂さんという人がいました。どうやら大伴さんと石麻呂さんは友達のようです。食べても食べても太らない石麻呂さんの様子を見て大伴さんがこんな和歌を詠みました。

意味はこんなカンジでしょうか。

「石麻呂さん、君はかわいそうになるくらい痩せてるね。夏になって暑くなったらもっと痩せてしまうよ。夏痩せにはうなぎが効く、どうだいうなぎをとって食べたら?」

大友さんが石麻呂さんをからかい気味に詠んだ一句です。

万葉集の次の句では、またまた石麻呂さんに呼びかける句があります。

痩す痩すも 生けらばあらむを 将(はた)やはた 鰻を漁ると 河に流れな

「石麻呂さん、元気になろうと思ってうなぎを取りに川に入ったはいいが、流されたら元も子もないよ」といった内容の句を詠んで、かなり石麻呂さんの痩せっぷりをイジっています。

そういう家持さんも痩せていたそうです。

その証拠に、万葉集には紀女郎(きのいらつめ)さんが家持さんに宛てたこんな一句が。。。

戯奴(わけ)がため、我が手もすまに、春の野に、抜ける茅花(つばな)ぞ、食(め)して肥えませ

あなたのために、手を休めることなく、春の野で抜き取った茅花(つばな)ですよ。食べて肥ってくださいな。

紀女郎(きのいらつめ)さんは家持よりも年上の人妻。

きっと若い家持をからかったんでしょうね。

万葉集が編纂されたのは奈良時代(710〜794年)末期と言われています。

さかのぼること1300年。奈良時代、すでにうなぎは夏バテに効くお魚として知られていたことがわかります。

うなぎと日本人、とっても長い付き合いですね。

夏バテにうなぎ、何がいいのか?

うなぎはビタミンがとても豊富なお魚です。

中でも目立つのはビタミンA含有量の豊富さ。

蒲焼一人前でなんと、一日に必要とされるビタミンAの『3倍』含まれているそうです。

ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。 また、レチノールは、視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンという物資の合成に必要なため、薄暗いところで視力を保つ働きもあります。

そのほか、ビタミンB・D・E・カルシウムや鉄分などが含まれます。

また、うなぎの脂肪には、脳の活動を活発にするDHA、血液サラサラ成分のEPAが、さらにはうなぎのあのヌルヌル。あれは「ムコ多糖類」と言って、胃腸の粘膜保護の働きがあります。 「夏場に弱る胃腸にはもってこい」というわけです。

以上をまとめると

『うなぎさんは栄養満点!』ってことです。

山椒にもちゃんと意味がある

蒲焼に添えられている「山椒」。あれはうなぎの風味を引き立たせるだけではないんです。

山椒には胃腸の活動を整える作用があり、消化を助けてくれます。また、少しピリッとした辛味は「サンショオール」という成分で、内臓の動きを活発化するだけでなく、倦怠感やむくみ、冷え性などにも効果がある、とされています。

土用の丑の日に「うなぎ」なわけ ① 〜 一般論

『土用』とは

「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の前の約18日間を『土用』と呼びます。

つまり、季節の変わり目なのです。

その期間の中で『丑』の日に当たるのが『土用の丑』。

(丑の日については後ほど詳しく)

季節の変わり目といえば、風邪をひいたり、変わる季節に体が対応できなかったり、何かと調子が悪くなる季節でもあります。

特に、夏場は胃腸が弱りやすく、体力が落ちがちです。

そこで、登場するのが『栄養満点のうなぎさん』

滋養強壮にいい、うなぎを食べて元気になろう!というワケです。

今年の土用の丑の日は?

2017年の『土用の丑の日』はこうなっています。

  • 1月26日
  • 4月20日
  • 5月2日
  • 7月25日
  • 8月6日
  • 10月29日

嬉しいことにこの夏2回もうなぎが食べられますね!

もちろん夏以外の「土用の丑」もうなぎをおねだりしてみましょう。

ちなみに7/25は「一の丑」8/6を「二の丑」と呼びます。

「食すれば夏負けすることなし」 by  G.H.

それにしてもこんな素敵な習慣、誰が考えたんでしょうね?

もはや日本の文化と言ってもいいでしょう。

その起源は不明ですが、この習慣は江戸時代になると一気に広がりを見せます。

江戸時代中期、「夏場にうなぎが売れない」ことを悩んだウナギ屋さん。そのことをG.Hさんに相談したところ、何やらアドバイスを受け店先にこのような張り紙をしました。

「本日土用の丑の日、ウナギの日。食すれば夏負けすることなし」

このコトバを考えたのが平賀源内

「日本のダヴィンチ」と呼ばれるほど多才の天才です。

語呂も良く、力強いキャッチコピー。

平賀源内はコピーライターとしても大変優秀だったんですね。江戸時代に流行らせた習慣が今でも文化として残っているんですから。

土用の丑の日に「うなぎ」なわけ ② 〜 暦から読み解く

2017年の立夏は5月5日。立秋は8月7日。

暦の上では「夏は5~7月」です。

その期間での土用は「立秋の前18日間」だから 7/20~8/6 となります。

旧暦では月や日にちを「十二支」で表していました。(正確にはこれに十干を合わせた「干支」で表していましたがここではシンプルにするため十二支だけにしています。)

  • 子(ね)
  • 丑(うし)
  • 寅(とら)
  • 卯(う)
  • 辰(たつ)
  • 巳(み)
  • 午(うま)
  • 未(ひつじ)
  • 申(さる)
  • 酉(とり)
  • 戌(いぬ)
  • 亥(い)

土用の丑の日に当たる7月27日は、旧暦で『未(ひつじ)月の丑の日』となります。

上の十二支の円を見ると未(ひつじ)の対面にあるのが丑。

夏真っ盛りの未月、それを丑を食べて乗り切ろうという思いが込められているようです。

また、陰陽五行説では「未は火気」を表し、「丑は水気」を表します。

そう、火気を水気で鎮めようという考え方です。

なるほど、色々な意味があるんだなぁ〜と感心しました。

しかし、この考え方はうなぎを食べる根拠にはなっていません。だって、「丑を食べて乗り切る」と言っていますから。

実は江戸時代には丑(牛)を食べることは宗教的な考えからタブーとされていました。

そこで牛のように黒くて、水気の象徴である「うなぎ」を食べるようになったといわれています。

(参照:「古文書ネット」)

土用の丑の日に食べたいもの

土用の丑にはうなぎだけではなく『う』のつく食べ物がいいと言われます。

うどん、うめぼし、うり、うし、うま etc.

あなたは何が食べたいですか?

ボクなら、馬刺しとうなぎと冷しゃぶをつまみにいっぱいやった後、梅干しときゅうりの乗った冷やしぶっかけうどんでシメる。最後に冷えた胃腸を「うなぎの肝吸い」であっためてお昼寝。

最高ですね!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

「うなぎ」、まだまだ語りつくせないほど奥が深そうです。

この記事を読んでいただいたあなたにとって『元気な夏』になりますように!

それではまた!

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