日本では古くから「すべてのものに心がある」といいますが、監督はそのことを知っていたのかもしれません……。
『ラバー』
rubber/2010/フランス
★★★★☆(星4つ)
監督:カンタン・デュピュー
出演:スティーヴン・スピネラ、ロキサーヌ・メスキダ
あらすじ
タイヤが何故か殺意を持って人を殺していくサスペンスコメディ。
砂漠に打ち捨てられていたタイヤのロバート。そんな彼にある日突然、どういうわけか命が宿ってしまう。おまけに荒涼とした砂漠をさまよっているうちに、恐ろしいテレパシー能力を持っていたことが判明。なんと自身が動かなくても壊したいと念じるだけで物を破壊できてしまう。最初のうちは砂漠の小動物やゴミを狙っては壊していたが―。
「Oricon」データベースより
荒野でタイヤが意思を持つ
双眼鏡を覗くとそこにはタイヤ。
砂漠に捨てられたタイヤは突然意思を持ち動き始めます。
タイヤなのに眠る。そして水を飲む
ウサギを殺す。
車にひかれて気絶する。
カラスを殺す。
ついに人を殺す。
女の子の部屋をのぞく。
溺れる。
これが『タイヤ』なのです。
謎すぎて笑うしかない
とにかく展開が謎でシュールです。
あまりにも謎が多くてホラーなのに怖くないし、コメディーなのに笑えない不思議映画です。
この作品の楽しみ方はただひとつ。
な〜んにも考えないこと。
そうすると不思議に楽しくなってきます。
タイヤがテレビで観ていたものは
意思を持ったタイヤは破壊と殺しを重ね、ついに警察から追われる逃亡の身となってしまいます。逃げながらもさらに破壊を繰り返すタイヤはあるモーテルに逃げ込みます。追いついた警官が扉を開けると!
タイヤがソファーでテレビ見てました。
さてここで問題です。
タイヤはどんな番組を見ていたのでしょうか?
さすがにこの辺まで耐えて観た方なら、なんでも受け入れる状態になっていることでしょう。このシーンに、ボクは「深い!」と声を上げ、大きくうなずいていました。
突っ込むことを忘れさせる破壊力
この作品が始まってず〜っとツッコんでいましたが、それもタイヤがソファーでテレビを観ているシーンまででした。それ以降はツッコむことを忘れて、どこか清々しい気持ちでタイヤを受け入れ、その後は「無の境地」に入りました。
彼の「感情」を読み取ろうと、その「表情」の変化を逃すまいとひたすら凝視していたような気がします。
そう、ボクの精神はすっかり破壊されていたのです。
浅いとか深いとかそんな問題じゃない!
浅い深い、怖い面白い、笑える泣ける、ドキドキいやされる。
映画を見ているとさまざまな感情が沸き起こるものですが、この作品はそういった意味でどの作品にもない感情のベクトルがあるということを気づかせてくれました。
それは、あきらめ。
さんざん引っ掻き回された後にツッコミ疲れから来る「あきらめ」。そして、その向こうにある「無の境地」。
ぜひ、皆さんに味わっていただきたいものです。
もう一回見ようとも思わない。
誰かに薦めようとも思わない。
でも、けっして後悔はしない。。。
変です。
・・・・・・。
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今回ご紹介した作品
ラバー(DVD)
いかがでしたか?
映画『ラバー』は不思議すぎて最後には「無の境地」になれるステキな作品でした。
この作品との出会いに感謝します。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた別の作品でお会いしましょう。