映画『ガガーリン 世界を変えた108分』 英雄はめちゃくちゃナイスガイ!

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★★★★(星4.0)


パヴェル・パルホメンコ監督『ガガーリン 世界を変えた108分』

Гагарин. Первый в космосе/2013/Russia


あらすじ

1961年4月12日、ソ連の宇宙船ボストーク1号に乗ったユーリー・ガガーリンは、前人未到の有人宇宙飛行に挑むため、宇宙へと一人飛び立った。108分の孤独な宇宙の旅の途中、ガガーリンは自らの半生を振り返る―― 貧しい農村に生まれ、空を夢見た少年時代。3000人以上の空軍パイロットの中から選抜された精鋭20人の候補生の一人として厳しい訓練に耐えた日々。そして、世界初の宇宙飛行士に選ばれるまで。その頃地上では、「人類の英雄」誕生と、新しい時代の幕開けに人々が歓喜の声をあげていた……。

ドキュメンタリーのような伝記作品

地球は人類のゆりかごである。しかし、人類はいつまでもゆりかごに留まることはないだろう。

〜ツィオルコフスキー

ロシアの物理学者で作家のツィオルコフスキーの言葉どおり、ガガーリンは宇宙へと飛び立ちます。 この作品は、ガガーリンがボストーク1号に乗り込むところから無事帰還し、熱烈に歓迎されるまでをドキュメンタリータッチで描きつつ、ガガーリン青年の半生をフラッシュバックさせるという構成になっています。

陰鬱で美しいソ連とガガーリンの笑顔

1960年代といえば米ソ冷戦の真っ只中。アメリカとソ連が軍事力を拡大させ、熾烈な宇宙開発競争を展開していた時代。世界初の有人飛行は、人々のロマンを乗せて飛んだのではなく、国家の意地とプライドをかけた政治的な「戦争」の一環でもありました。

そんな時代に生まれたガガーリンは貧しい少年時代を送ります。そして空を飛ぶことに憧れ空軍パイロットとなりました。3000人を超えるパイロットの中から20名の最終選考に残り、厳しい訓練を受けることになります。

なぜ彼が選ばれたのか、脱落してゆく仲間への思い、地球に残される家族の葛藤、政治的な思惑。それらが描かれる映像は重厚かつ陰鬱で、それでいてどこか美しいソ連そのものを表すようでした。

その重々しい中にあって、ガガーリンの笑顔はとびっきりの光と色彩を放っていました。冷戦という重々しい空気感と、夢を追う青年の純粋さとのコントラストが美しい映像で表現されています。ロシア映画の醍醐味といったところでしょうか

英雄の条件

有人宇宙飛行を何が何でも成功させて、ソ連の技術はアメリカより優れていることを見せつけたいフルシチョフ書記長。東側諸国にとって優位となる世界情勢にするため、ガガーリンをソ連の広告塔として起用することを最初から決めていました。そのため英雄となる人物に求められたのは、貧しい出身、ロシア人らしい名前、好印象を与える顔でした。また、宇宙船内は大変狭いため、精神的・肉体的能力とともに体が大きくないことも条件の一つ。ガガーリンはそれらを兼ね備えた選ばれるべくして選ばれた人物なのです。

注目ポイント

この作品はガガーリンの人生前半の伝記であり、ヒューマンドラマでもあります。

ですが宇宙飛行士の物語ですからロケットと宇宙のシーンは欠かせない要素です。

宇宙船が地球を周回しているシーンは少ししかないのですがとても印象に残りました。

軌道に乗った宇宙船は静止して描かれることが多いですが、この作品では「びゅーん!!」です。「そっか、自転している地球を周回するにはそれなりのスピードで飛んでないといけないもんね。」と妙に納得させられました。

最近の宇宙作品では「インターステラー」や「ゼログラビティー」などがありますが、それらに見慣れてしまっているとボストーク1号のポンコツぶりに驚くことになります。

「え、飛ぶの? 人、乗せるの? これ…。」

と言いたくなるロケットにびっくりしました。でも、子供の頃描いたロケットってこんなんだった。THEロケットは火を吹いて飛んでいきます。

大気圏突入シーン。炎が近い!

「だ、大丈夫なん?」

やっぱり驚きます。

それから、一番の注目は着陸シーン。

まさか!?って感じです。

ぜひ作品を見て驚いてください。

実際の映像

ここに実際の打ち上げとその後が記録されています。この作品が事実に対して忠実に描かれていることがよくわかります。

生みの親と二番目の男

開発技術者、コリョロフはソ連の宇宙開発第一人者です。ソ連時代、宇宙船の生みの親であるコリョロフの熱意、不安と葛藤、ガガーリンへの思いが随所で描かれておりとても印象に残りました。政治的な背景よりも技術者としての 『熱』が伝わってきます。

最終的にガガーリンは人類初の有人飛行パイロットとなりましたが、その時の2番手がゲルマン・チトフです。作品の中で彼とガガーリンとのやりとりが多く描かれています。

「英雄になるのは常に最初に成功した人だ。2番目はどうでもいい。」

という内容の発言をガガーリンに対して自嘲気味に言っています。しかし、ガガーリンの飛行成功の4ヶ月後ボストーク2号で宇宙へと旅立ちました。確かにチトフはガガーリンほどの注目は集めませんでしたが、地球を17周半まわり、地球の写真を撮ることにも成功しています。

まとめ

とにかくガガーリンはナイスガイでした。2番手に甘んじたゲルマン・チトフとは能力的にはほとんど『差』はありませんでした。最後の決め手は『人柄』。ガガーリンの爽やかな笑顔はそれを物語っています。


いかがでしたか?

映画『ガガーリン 世界を変えた108分』は、ガガーリンの半生を描くだけではなく、人類初の有人宇宙飛行という事実を通してさまざまな人の思いを伝えてくれるドラマでもありました。

今夜、夜空を見上げたら宇宙ステーションや人工衛星が見えるかもしれませんね。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた別の作品でお会いしましょう。

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