1994年7月17日、アメリカ・パサデナにあるスタジアム、ローズボウルで行われたサッカーW杯・アメリカ大会決勝。ブラジルとイタリアの対戦はスコアレスのまま、大会史上初のPK戦での争いとなった。
両チームともに一人目がゴールを外し、二人目と三人目が決め、2-2の同点。四人目のキッカー・イタリアのマッサーロが外し、ブラジルのドゥンガが決めて2-3。5人目のキッカーはイタリアの至宝、ロベルト・バッジョ。ここで決めて相手のミスを誘いたい場面、バッジョの蹴ったボールはゴールマウスの上を通過していった。
うなだれる、バッジョ…。
バッジョの前向きコトバ
ブラジルが当時史上最多となる4度目のW杯優勝を決めた瞬間でした。サッカーのことはそんんなに詳しくないけど、バッジョとデル・ピエロが好きだった僕にとっては、忘れられないワンシーンです。
試合後、インタビューでゴールを外したバッジョは記者たちにこんなコトバを残しています。
PKを決めても覚えている人は少ないけど、外したらずっと覚えていてくれるからね。
あの絶望的なキックのあとでもこんなに前向きなコトバを言えるバッジョが「かっこいいなぁ」って思いました。アキレス腱の怪我を押して試合に出場していたバッジョにとって、「全てやりつくした」という思いがあったのでしょう。
フレーミング効果
ゴールを外した事実はネガティブなこととして受け止められがちですが、『少し視点を変える』ことによってバッジョの発言は、見事な「前向きコトバ」に変わりました。
もしあの時バッジョが、「すまない、僕は大変なミスをしてしまった」とか「僕のサッカー人生においてあれは悪夢だった」などとコメントしていたらどんな印象を受けたでしょう。
きっと同情や批判などのコトバで溢れたでしょう。
しかし、バッジョはそうは言いませんでした。彼の発言はネガティブな感情を見事にポジティブなものに変えました。ホント拍手喝采。きっと多くの人々が賞賛に満ちた拍手を贈ったのではないでしょうか。
このようにコトバの表現方法により価値観や選択肢が変わることを心理学の世界では『フレーミング効果』と呼びます。
例えば
あなたが大きな手術を受けたとします。そして医師にこう言われます。
- あなたの1年後の死亡率は10%です。
- あなたの1年後の生存率は90%です。
事実はひとつですが、言い方によってずいぶんと印象が変わりますよね。
ものの見方を少し変えることによって、結果そのものが変わってくるような気がします。
By Roberto Baggio – it.wikipediaLink
バッジョは負けたけど
その後、イタリア代表の背番号10番はデル・ピエロへと引き継がれました。バッジョは1998年フランス大会にも出場しましたが、W杯を手にすることはなく2004年に現役を引退しました。
W杯には恵まれなかったバッジョですが、あの試合とあのコトバは今後も語り継がれていくことだと思います。
1994年、バッジョがPKに挑んだあの試合で、ブラジルのゴールを守っていたのが守護神、クラウディオ・タファレルでした。
運命を分けたあのキックのあと、タファレルはバッジョに駆け寄りこう言いました。
それでもあなたは偉大だ。
タファレルのコトバ、こころに染みますね。
一流のアスリートはプレーも礼儀もコトバも超一流ですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
皆さんにとってハッピーな1日が訪れますように ♪